創作に取り組む意義。~「ミッキーはなぜ口笛を吹くのか」を読んで~

作業法・思考


こんばんは。
ピクセルアニメクリエイターのおかか容疑者でございます。


アニメーション。
原理としては至極単純ながら、現代においてもなお我々を魅了し続ける素晴らしい技術です。
昔からアニメーションの名作というものは生まれてきております。しかし、その進化と発展の歴史というものはよく知らないもの。


ワタシも自称ピクセルアニメクリエイターとしてアニメーションに携わる身。ですのでアニメーションの歴史なども簡単にでも知っておいた方がいいだろう、と考えまして。
自分なりに昔のアニメーション作品を鑑賞したりはしておりましたが、アニメーションの歴史がわかる本などはあるのかな?と調べてみましたところ、なかなかにお誂え向きな一冊が目に飛び込んできました。




というわけで本日は、「ミッキーはなぜ口笛を吹くのか―アニメーションの表現史―」(細馬 宏通)について語らせていただきましょう。





全体の感想

この本はアニメーションが生まれてからワーナーブラザーズの時代に至るまで、時代ごとに主要となる海外のアニメーション作品をピックアップ。
そしてその作品が時代的にどれほど画期的なものだったのか?について語っております。


単なるアニメーションのテクニックなどの話のみならず、当時の技術的・時代的な背景も踏まえての解説がなされます。そして後半は音や声についての話も多くなります。
タイトルにございます「ミッキーがリズムに乗って口笛を吹くこと」がいかに革新的だったか。現代の視点ではなく、当時の人々の気持ちを体感できるような作りになっております。


「考え方を学ぶ」よりは、どちらかというと「知識を得る勉強的な本」という感じでした。
当時著名だったのであろう海外の方の名前がポンポン羅列されたりして少々置いてきぼり感のある部分もございますが(主要な人物はきっちり解説されています)、面白い小話や雑学も散りばめられております。
「ミッキーの作品のタイトル『蒸気船ウィリー』の『ウィリー』って何やねん」といった話や、ミッキー以外でも「バックスバニーの人参をかじる音はどうやって出してる?」「海外アニメはなぜリップシンク(口と言葉をリンクさせる)が大事なのか?」といったような話も盛り沢山。


本文中に何度か「生徒とのやりとり」の話が出てきます。つまり著者の方は学校で芸術関連の先生をなされているようで。
「アニメーションの教養をつける」という意味でも良い教材となるでしょう。


※ボリュームが結構ある本です。各章にはそれぞれテーマが決められていることが「あとがき」に書いてありますので、先にここから一読しておくとわかりやすいかもしれません。



注目ポイント

それでは今回の注目ポイント。
「第七章 ミッキーはなぜ口笛を吹くのか」より引用いたします。



彼にとってアニメーションは、二つの意味でまぎれもなく強く甘い誘惑であった。
厳格で道徳家で禁欲的な父親の世界に神経をすりへらしている若者にとって、アニメーションは逃げ場を与えてくれた。一方、同じ父親からいつも支配されている者にとって、アニメーションは完全にコントロールできる対象を与えてくれた。
アニメーションの中でならウォルトは自身の世界を持つことができた。そしてアニメーションの中でなら、ウォルトは権力者になれたのである。

「ミッキーはなぜ口笛を吹くのか―アニメーションの表現史―」(細馬 宏通)

実はこれは著者の言葉でなく、ウォルト・ディズニー伝という本からの言葉みたいなのですが。
(おそらくはこの本↓だと思われます。
創造の狂気 ウォルト・ディズニー | ニール・ガブラー, 中谷和男  )



ウォルト・ディズニーは知らないものはいないであろう、アニメーションの大御所たるディズニーの創設者ですね。
彼もまたアニメーションに魅せられていたわけですが、その理由はかなりマイナスな環境から生まれたものでした。
引用部分にあるように、ウォルトの父親はとても厳しく支配的であったと。現代でも「親ガチャ」という言葉が使われるように、親との反りが合わないと子供時代は(場合によっては大人になっても)辛い生活を続けることを余儀なくされてしまいます。
その中でウォルトが出会った、イラストやアニメーションの世界。ここでは自分が全てを決めて、全てを創り出すことができる。内なる世界を誰にも邪魔されずに自由に表現できる。これはまさしく、現実で厳しい生活をしている人にとって一つの道となるのです。

ワタシが現在よく見ているSNSに「Cara」がございます。
海外の方が多く、アーティストが中心となって集まっているSNSです。
Caraを見ていてよく感じるのが、アートに癒しを求める人が多いこと。
何かしら鬱屈したものを抱えていて、その捌け口としてアートに取り組んでいる。という方が多いという印象を持ちました。

これはCaraに限った話でもなく。他SNSでも絵師の方などは、言い方がよくないかもしれませんが割とメンタルが不安定な方が比較的多いように見えます。
因果関係はわかりませんが、アートは心と密接にかかわっているんだろうなと。

芸術や創作に取り組む理由は人それぞれ。
自分の創り出す能力を評価してもらいたい、というタイプの人もいるでしょう(ワタシも多分このタイプに近い)。しかし、こういった自分の苦しみを吐き出すことを主目的として取り組んでいる人もいます。
どの理由がいい・悪いなどというものはございませんが、ワタシ個人としては、こういう人々こそが「アーティスト」なのだろうな、と少しだけ自分に引け目を感じてしまったりするのです。

もちろん、悩みや苦しみがなければアーティストとして大成しない、などという事はついぞ思ってはおりません。
ただ、こういった自己のための表現活動を続けている方もいるのだ、という事実を感じる機会が増えてきました。こういった方々がいる限り、人がアートを創るという営みはおそらく延々と続くのだろうなと。
創作活動というのは、遥か昔からいろんな人の心を救ってきたものだから。


まとめ

今回は「ミッキーはなぜ口笛を吹くのか―アニメーションの表現史―」についてお話しいたしました。


前回のお話「シャーロックホームズから見る、「需要」の問題について。」ともやや通ずる部分があるかもしれませんね。
商業としてイラストやアニメーションを描く方もいる。しかし、お金にならずとも自分の想いを乗せた作品を創り続けるという方もいる。
それもまた、とても美しいことです。




さて…そろそろお時間です。
またのご面会、心よりお待ちしております。

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