千変万化、手品のごとき物語。~「ドグラ・マグラ」を読んで~

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こんばんは。
ピクセルアニメクリエイターのおかか容疑者でございます。


ときおり、何か難しい本を読んでみたい!という欲が湧き起こることってありませんか?
夜に難しそうな本を片手にロッキングチェアで揺られながら読書に耽っていたりすると、もうそれだけで知的な雰囲気満載になりますよね。


そういう欲から、というわけでもありませんが、前々からずっと気にはなっていたけど読めていなかった本というものがございます。
なにぶん昔の本ですので入手は難しいのでは……とも思っておりましたが、現代ではkindleという文明の発達により、昔の本が無料で読めちまうんですよね。
kindleでなくとも、青空文庫さんなどはボランティアの方々が著作権の切れた多くの作品をネット上に掲載すべく尽力されていたりします。(来月の2024年7月には新館(新しいサイト?)に移るそうです。すごい。)


それならいっぺん読んでみようではないか、とチャレンジしてみた本がコチラ。




本日は夢野久作の「ドグラ・マグラ」について語らせていただきましょう。


※基本的にワタシの読書記録のコーナーではビジネス書のような学びを得る本について話しておるのですが、今回は小説でございますのでシンプルに「全体の感想」と「ネタバレ感想(折り畳みます)」を話してまいりたいと思います。
ネタバレ感想の方でもあくまで感想を話すだけで話全体のネタばらしはしませんので、もし「どういう話なのか知りたい」と思っておられるならば別のサイトをお探しくださいませ。




全体の感想

そもそもなぜこの作品を覚えていたかと申しますと、日本三大奇書としてこの作品の名前が挙げられていたんですよね。
他の2作(黒死館殺人事件・虚無への供物)は忘れていたのですが、ドグラ・マグラだけはカタカナかつ意味不明な言葉だったこともあってインパクトが強かったのでしょう。
加えて、「読んだ人間は頭がおかしくなる」などの物々しい噂も聞いていたので、怖いもの見たさもあってこの度読んでみたわけです。
(読了しましたがワタシはたぶん正常だと思います。たぶん。)



それではいろいろ語ってまいりましょう。
最初にこのインパクト抜群のタイトル、「ドグラ・マグラ」とは何ぞや?というところから。
ここはネタバレになるワードでもありませんし、割と話の序盤で語られますので先に話しておいてもよいでしょう。

ドグラ・マグラとは長崎地方の方言らしく、「手品・トリック」という意味のようです。
このワードは作品の重大なカギになるわけではなく、それよりもこの作品全体の作風を表している、と言った方がよいのかなと感じました。


一番最初の始まりの部分だけお話ししておきましょう。
この物語は主人公が石壁に囲まれた部屋で何も記憶がないところからスタートします。ここはどこなのか?なぜこんな所にいるのか?そして自分は誰なのか?
その混乱の最中、別の部屋から聞こえる「返事をしてほしい」という少女の声。全てが何もわからない混沌という、かなりハードな始まりです。



聞いていた前評判から一転、

おもろいやんけ!!

とワタシは一気に引き込まれました。
そして物語は「ドグラ・マグラ」として、そこから千変万化の展開を見せるのです。


また、この作品は登場人物の評価が二転三転するのも特徴的だなと感じました。
だいぶ強烈なキャラクターがいろいろと登場してくるのですが、話の流れで主人公からの見方が一気にガラッと変わる。
こういうことは実生活でも(ここまで極端ではないでしょうけど)よくあることですよね。その人が行動を起こした背景や真意を知る、というのは本当に大事だなと思わされます。


あと、昔の作品なので現代では使うのが憚られる言葉、わかりやすく言うと放送禁止用語みたいなものがよく出てきますね。だいぶ新鮮。
言い回しも「~~みたような(みたいな)こと」「~~なのか知らん(なのかしら)」など、昔はこういう言葉遣いがなされていたんだ、という発見もあって、こういう部分も個人的には非常に面白かったですね。


こういった点や舞台背景など、現代では特に異様な空気感を感じられる作品でございました。
読んでいると作風がいきなり変わったりして「これ同じ本読んでるのか??」という錯覚を覚える場面もしばしば。まさしく「ドグラ・マグラ」。

それなりに長編ですが、骨太かつ奇妙な物語が好きだという方は是非に。




ネタバレ感想

では、これ以降はネタバレで語ってまいりますね。



先もお話しした通り、この作品には強烈なキャラクターがいっぱい登場しますね。
その中でもやはり「正木博士」のインパクトというのは、多くの方にとって一番大きいのではないかなぁと。
主人公の「私は若林博士より正木博士の方が好きだ。一言謝ってくれたなら喜んで下僕になったかもしれない」、という下りに「わかる~!」となった人は多いのではないでしょうか。


基本的にはおどけた調子で舌も頭も回る天才。だがその実は学術の鬼として精神科学を究めるべく非道な行いも辞さなかった。こういう極端すぎる二面性のキャラクター、いいですよねえ。
「何かを突き詰めるためにどんな犠牲もいとわない」という姿勢は、正直なところ個人的にはかなり共感できます。
物語自体は恐ろしい結末が示唆されて終わるわけですが、その中でも正木博士が最終的には人情に抗えなかった(ように見える)部分が、ある種の救いではあるのかなと。



正木博士が「犯人は俺だ」という自白を始めた際、主人公が若林博士の名を上げようとして「馬鹿!無考えにも程がある…!」と一喝するシーンで泣いてしまいまして。

主人公は博士の言葉を遮るように叫んだところから、正木博士をかばおうと必死だったのでしょう。
そして正木博士はほぼ全てを知りえた上で、尚話そうという姿勢を強行した。

どちらにも心を動かされましたね。
一番恐ろしい相手がわかる結末を知ると、この場面はさらに感慨深いものがございますな。



このシーン以外でも、特に遺言書の部分は内容が多岐にわたって急激に変化するので面白いですね。
作中でもこの本自体について語られているように、バラバラに思える要素が最終的には全て関連しているという点も見事でした。
また、ワタシは舞台となっている精神病院というものを詳しく存じ上げないのですが、少なくともこの作品においては正木博士によってボッコボコに叩かれておりますので、当時の人々の考え方はこういうものだったのかなぁとも思わされました。
憎いアイツを冤罪で放り込めばもう地獄行きだよという。事実だとすると怖すぎますわね…。某アニメで「こんなところ」呼ばわりされているのも頷ける。


何というジャンルに当てはまるべきかよくわかりませんが、本編の謎解き要素だけではない、単なる推理小説(怪奇小説?)にはとどまらない魅力がこの作品にはあるなと。




まとめ

本日は「ドグラ・マグラ」について語らせていただきました。


これを当時読んだ人はかなりビックリしたんだろうなという想像がありありと浮かびますね。
現代で読んでも十分面白い作品なのですよ。
現代ならではの新しい作品にはたくさん触れていきたいですが、こういった古典に触れるのもまた刺激が多くてためになるものですね。
「時代の新古」という面でも、バランスよく本を読んでいけたらいいなと思います。





さて…そろそろお時間です。
またのご面会、心よりお待ちしております。

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